筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)治療の意義

医学界における、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)の認知について

筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)の病態生理は、いまだ不明です。通常行われる検査では、明確な異常が認められません。MPS治療の効果が見られるものの、メカニズムは今のところ、病理学的にも解明できていないのです。
そのため日本のみならず海外においても、科学的な証明がなされていない、主観的な所見に過ぎないとの意見もあります。しかし原因が究明されてないからといって、事実が存在しないことにはなりません。

MPSの可能性が考慮されず、また見過ごされる結果、
「検査では異常が見つからない」
「原因が分からないので対処法がない」
「老化現象だから仕方ない」
と言われている方がたくさんいらっしゃいます。

筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)治療を第1選択に

MPSの治療は、短期的には痛みを取り除き、長期的には筋肉の柔軟性を取り戻すことが目的となります。
痛みがあれば、不自然な姿勢を強いられるでしょう。筋肉がこわばり拘縮していれば、関節等に余分な負荷がかかります。そのため他の筋肉に負担が及び、新たな痛みと関節の変性等が引き起こされる可能性があります。

原因が不明な多くの筋・骨格系の痛みは、

  • 過去の打撲やねんざ
  • 加齢による負荷の積み重ね
  • 筋肉の反復的な使い過ぎ
  • 悪い姿勢、衣類等による圧迫・締め付け
  • 座りっきり、立ちっぱなしなどの毎日

といった、日常生活のアンバランスに起因することが考えられます。

ですから関節、筋・骨格系の慢性痛予防やアフターケアのために、普段の運動・リハビリテーションはとても有効です。しかし痛みがあったり、筋肉がこわばって可動域が制限されていては、適切な運動はできません。
筋拘縮を解消しようと無理に体を動かすのではなく、十分に体を動かせる状態を取り戻すことが先決ではないでしょうか。

トリガーポイントは、関連痛といって他の部位に痛みを発生させる事があります。そうなると、関連痛が起きた場所にも二次的にトリガーポイントが生じてきます。
MPS治療の開始時期が遅れるほど、トリガーポイントは数が増え、かつ広範囲に及ぶため、気がつかないうちに関節の可動域も狭まります。
痛みが続き関節の動きが制限される状態では、トリガーポイントはなくならず新たに生じていく事が多いのです。

トリガーポイントが、痛みと可動域制限をもたらしているのですから、一時的に筋拘縮を解消するよりも、早期のトリガーポイント治療が望まれます。MPSの治療で痛みを取り除き、関節の柔軟性を取り戻すことにより、他の治療にもよい影響を及ぼすでしょう。
関節、筋・骨格系の慢性疼痛治療の第1選択として、MPS治療を奨める理由です。

外国と日本の、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)治療事情

MPSの標準治療であるトリガーポイント注射は、局所麻酔薬、ステロイド、ボツリヌス・トキシンA等を、テンダースポット(過敏な部位)およびトリガーポイント(発痛点)に浸潤させます。
索状硬結・過敏部位への薬剤作用で筋肉を弛緩させたり炎症を鎮める効果もありますが、針の穿刺によって機械的にトリガーポイントを刺激することが主な作用になります。
ですから海外でも注射針や薬液を用いない、ドライニードリング(鍼療法)が行われます。海外のドライニードリングは、中国鍼の応用のようです。

日本で行われているトリガーポイント鍼療法は、海外のドライニードリングにない責任トリガーポイントという概念が特徴です。責任トリガーポイントは、中国鍼が経絡理論として体系化されるにつれ顧みられなくなった、阿是穴と同様のものと考えられています。
日本のトリガーポイント鍼療法は、アメリカの「トリガーポイント・マニュアル」に触発されて始まった後も、独自に研究が進められているのです。

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