筋・筋膜性疼痛症候群と関節、筋・腱の痛み

〔さすらいの痛み人〕を作らないために、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)のことを知ってください。MPSの好発部位は、頭・首・肩・四肢・腰です。
慢性の腰痛、首・肩・膝・肘の痛み、頭痛は筋肉・筋膜が原因かもしれません。

痛みについて

痛みには、生理的な痛みと病的な痛みがあります。生理的な痛みとは、生物が生きていく上で必要な、生体警告系反応のことです。
治療の対象となるのは病的な痛みです。病的な痛みには、炎症・外傷などによる原因がはっきりした急性障害の痛みと、慢性の痛みがあります。
慢性の痛みは、

  • 急性疾患、外傷が治癒した後に続く痛み
  • 原因が見当たらない痛み
  • 原因を取り除いても残る痛み

などです。原因がはっきりしないため、治療法も確立されていません。

関節慢性痛の原因

このページでは慢性化した痛み、とくに悩んでいる方が多い、腰・膝・肩といった関節、筋・骨格系の慢性疼痛について取り上げます。
慢性の筋・骨格系の痛みのうち、腰痛の発症や慢性化で、病名・診断名がつけられるのは約15%、原因を特定できないものが約85%に及ぶといわれます。(日本整形外科学会・日本腰痛学会/腰痛診療ガイドラインより)
腰痛をはじめとした、ほとんどの慢性痛が原因不明ということになります。原因不明の慢性痛はこれまで、ストレスなど心因性、社会的因子が影響するのではないかといわれていました。
このため的確な治療法がなく、いつまでも続く疼痛に悩まされる〔さすらいの痛み人〕が出現してしまうのです。

関節・関節周辺の痛みの原因としては、

  1. おもに加齢に伴う、変形性関節症
  2. 過度な運動などによる、関節障害
  3. 四十肩・五十肩
  4. 関節リウマチ
  5. 化膿性関節炎
  6. 痛風

などが挙げられます。

④〜⑥は原因疾患がはっきりしているので、それぞれの治療を行います。
変形性関節症、運動による関節障害、四十肩・五十肩などと診断された痛みの治療は、大きく分けて保存療法と手術療法が行われます。痛みの部位と病名・診断名、慢性疼痛の治療の詳細は、各ページにまとめてあります。

従来の整形外科、ペインクリニックでは、これらの症状が関節と神経の疾患によるものとして考えられていました。しかし関節や神経の疾患を治療しても、治癒しなかったり再発する事が多かったのです。
関節・神経に異常が見られないケースで、心因性・社会的因子に注目してストレスを取り除く治療(認知行動療法など)を行っても、個々のケースにより治療効果は異なります。

関節の慢性痛は筋・筋膜性疼痛症候群

筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)は関節や神経ではなく、筋肉に過敏な部位を伴う索状硬結=筋硬結が生じて、主に筋膜で痛みを発生し、さらに筋膜上の発痛点(トリガーポイント)が周辺に関連痛を引き起こすとする学説(1980年代アメリカ)です。〈 最新の研究では、筋硬結を生じない筋肉と骨の接合部、腱、靭帯などでも発痛し、特に筋骨接合部が主体ではないか、という見解が優勢です〉
原因となる、筋膜上、筋骨接合部にあるトリガーポイントを治療することで、関節・関節周辺(筋・腱など)の痛みが治癒・軽快することがあります。

これまで痛みの原因とされてきた、骨の変形や関節の腫れ、軟骨のすり減りなど骨格系の異常も、筋膜、筋骨接合部に生じたトリガーポイントと筋拘縮が引き起こす、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)が関与する可能性が指摘されています。
また、ストレスが慢性痛の誘因というより、痛みによって社会生活に支障をきたしたり、痛みが続くことの不安感が不眠・抑うつなどを招くとも考えられます。

原因が分からず長びく痛みは、恐怖感・絶望感を誘発し、さらに症状を悪化させることがあります。脳が痛みを増強・修飾する心身症の様相を呈するのです。
こうなると、関節・関節周辺の慢性疼痛は、痛みそのものが疾患といえます。痛みの原因を求めるより、痛みを取り除くことが治療の目的となってきます。

筋硬結・トリガーポイントの治療は低侵襲性(患者の身体的負担が小さい)で副作用が少なく、安全性の高いものです。いろいろな検査をしても原因がよくわからない、腰痛、首・肩・膝・肘の痛み、頭痛など、慢性疼痛治療の第1選択としてもいいのではないでしょうか。

【当ページへのコメントについてお知らせ】
このMPSページを開設以来、多くのユーザーに閲覧いただきました。サイトの趣旨である、痛みの治療方針選択に多少なりとも貢献できたかと思います。
コメントを通じてのご質問も増えてきました。しかしながら、個々の患者さんの症状はそれぞれ異なり、問診だけで判断できません。コメントのやりとりで、適切なアドバイスは難しいことです。
真剣に悩むお気持ちは理解できるのですが、医療行為には慎重な対応が求められます。従いまして、今後はコメントの受付を中止させていただきたく存じます。

MPSサイトを閲覧いただき、ご自身の症状について適応かどうかは、当ページへのご質問ではなく、かかりつけ医に相談されることをお勧めします。
MPSサイトを開設している野崎真治は、千葉県流山市でトリガーポイント治療を行っています。近隣の方は「のざき鍼灸治療院」で対応いたします。他の地域にお住いの方は、SIGトリガーポイント研究会員の治療所をご検討ください。(ページ下部「このサイトの趣旨」にリンクがあります)