関連痛
西洋における、筋骨格系の痛みに対する研究の歴史は古く、イギリスのカレッジホスピタル大学臨床研究部長である、Thomas Lewis卿による1938年の報告が、関連痛というものに対する草分け的な研究といえます。
その報告とは、筋肉に微量の食塩水を注入することにより、その部位だけでなく遠隔部へと痛みが放散するというものです。
そして、痛みの放散する部位は必ずしも通常の神経の走行、分節に沿ったものではないため「神経痛」ではなく、「関連痛」と呼ばれました。
また同大学のKellgrenは、高張食塩水を筋肉内へ注入することにより、その痛みが筋肉のみならず、他の構造物に感じることがあるとの報告をしました。
例えば、後頭部の筋肉へ注入した場合、いわゆる頭痛と同じような痛みが。また中間広筋という大腿部の筋肉に注入すると、膝関節の中へと痛みが生じました。
この報告は、様々な痛みの原因が、筋肉に由来しているのではないかということを示唆しているといえます。
トリガーポイント
さらにKellgrenは、このような関連痛を発生させる過敏なスポットがあり、そのスポットへ局所麻酔薬を注入することにより、痛みを取り除くことができると報告しました。このスポットが現在でいう「トリガーポイント」のことです。
筋・筋膜性疼痛
その後、アメリカで長年、筋・筋膜痛の治療に当たっていた、医師であるTravellが1983年にSimonsとの共著で「筋筋膜性疼痛と機能障害・トリガーポイント・マニュアル」という書物を出版し、トリガーポイントについて体系を整えました。
現在もアメリカでは、トリガーポイントの研究が続けられ、トリガーポイント治療は医療で広く行われています。いっぽう日本において、鍼灸の技術を使ったトリガーポイント鍼療法の研究・臨床への応用が進められています。