筋・筋膜性疼痛症候群

筋・筋膜が原因の、慢性的な激しい痛み・しびれを総称します。一時的な筋肉痛と異なり、トリガーポイント(筋骨接合部や腱、靭帯の受容器が興奮したもの)によって引き起こされる痛みです。
特別な名前が付いていますが、原因が筋・筋膜だと思われていない多くの痛みの原因となります。

私はトリガーポイント治療という、おもに筋骨接合部の受容器を対象とする治療をおこなっています。通常の整形外科的治療では、なかなか改善しない痛みなども、筋・筋膜を対象にした治療により、ちゃんと良くなるという経験をたくさんしています。

現代医学的には、痛みの原因は骨の変形、軟骨のすりへり、神経の圧迫などに求められています。実際にはかなりの割合で、原因は筋肉に存在していることを、この事実が示唆していると思います。以上の考え方を、筋・筋膜性疼痛といいます。

椎間板ヘルニアがあろうが、骨や関節に変形があろうが、痛みの本当の原因は筋肉にあることがほとんどです。整形外科の医師でも、この「筋・筋膜性疼痛症候群」の考え方に基づき、治療をおこなっている先生もいらっしゃいます。

加茂整形外科》筋肉に着目した治療をおこなっているお医者さんです。特にヘルニアと言われた方はお読み下さい。
筋痛症治療例》手術をおこなっても改善しなかった方や、ブロック注射や色々な治療をおこなっても改善がみられなかった方達の、痛みの原因は筋肉に存在したという実例が書いてあります。

トリガーポイントは、筋肉の中の硬くなった部分(筋硬結)にできるものです。当然、筋肉の痛みを引き起こすのですが、それだけでなく、遠隔部へと痛みを放散することから、筋肉以外にも色々な症状の原因となっていると考えられます。様々な症状を「筋・筋膜性疼痛症候群」と総称します。

筋硬結が引き起こす様々な症状

例えば、坐骨神経痛など、一般的には神経に由来すると考えられている痛み。膝や股関節など、関節可動域の低下や痛み。また、しびれやめまい。
あるいは自律神経への影響から、耳鳴り、動悸、胃の不快感、生理痛、不眠などといった色々な不定愁訴、内臓器の機能障害などもあげられます。

トリガーポイントが形成される場所は、筋肉や腱、靭帯、関節包などといった軟部組織です。
特に筋膜、筋骨接合部に形成されることが多く、姿勢の維持などで特定の筋肉を長時間にわたり収縮させると、収縮自体はほんのわずかな力でも長時間同じ姿勢を維持することで、トリガーポイントが形成されるのです。また、スポーツなどで同じ動作を繰り返すことで特定の筋肉に負荷がかかり形成されます。

さらに、トリガーポイントを形成し、「筋・筋膜性疼痛症候群」を起こす誘因として、冷えやストレスがあげられます。これらはともに、自律神経(呼吸、循環、消化・吸収など意識しない部分をコントロールする重要な神経)のうち、交感神経を働かせるため、血管を収縮させます。
その結果、筋肉への血流量が低下することになり、トリガーポイントの形成を助長します。他には肝機能障害や痛風、糖尿病、風邪や月経なども影響します。

参考文献 トリガーポイント鍼療法(P.E.Baldry 著 川喜田 健司 翻訳 絶版) 医道の日本社