トリガーポイントとの出合い

学生時代から卒業後も含めると、接骨院にて5年あまり、その後勤務した診療所の理学療法室や整形外科においても、10年近くに渡り、数多くの慢性痛の患者さんの施術を経験させて頂きました。
その間、より高い治療効果を求めて技術を磨いてきたつもりです。各種の鍼法に加え、カイロプラクティックや関節マニュピレーション・モビライゼーション、IDストレッチ、その他色々な技術を勉強しました。

そんな中、トリガーポイント鍼療法に出合いました。相当に詳細な解剖学的知識、および高度な触察技術を必要とするので、習得するのが大変に難しく、この治療法のすごさを実感するまでに、何年もかかりました。
この治療法の本当の効果がわかるようになると、今まで学んで、これは効果があると思っていた、どの治療法とも効果の高さが圧倒的に違っていました。

もちろん、全ての技術を見てきたわけではないのですが、少なくとも私の知る限りでは、トリガーポイント鍼療法は、慢性的な運動器の痛みに対して、最も効果の高い方法だと思います。

疼痛の本態は受容器の感作

なぜ効果が高いのかと申しますと、現時点において、トリガーポイント鍼療法の理論と手法が、慢性の運動器の痛みの核心に最も迫っているからだと思います。
それは「痛みの受容器の感作」といわれるものです。最新の実験や論文から慢性の筋痛の本態は「受容器の感作」だといわれています。
筋膜や腱・靭帯・骨膜などには、受容器と呼ばれる痛みのセンサーが存在し、そのセンサーが過敏化・興奮した状態を「感作」と呼びます。この感作された受容器が虚血や筋収縮などにさらされ、痛むのです。

トリガーポイント鍼療法では、この感作された受容器に直接鍼を打ち、過敏化した受容器を正常化させます。根本の原因となるものを直接叩くので、最も効率的に痛みを退治できます。

痛みの本質は感作された受容器だと考えられますが、その周辺に起きてくる現象として様々な側面があります。
例えば局所の筋肉が硬くなったり、全身的な筋緊張が生じたり、局所的に血液循環が悪くなったり、うつ状態を伴ったりなどです。

色々な治療法が、様々な側面に焦点を当てて、それぞれの治療効果をあげているかと思います。
局所の筋肉を物理的に刺激してゆるめる方法(旧マイオセラピー・現在のMTーMPSやリニューイングセラピー)や、動かしたりリラクゼーションにより全体の筋緊張をとる方法(操体法や開節法、カイロプラクティックなど)。
また、心理療法やある種の薬も、痛みの一つの側面に対して有効な方法だと考えられます。

トリガーポイント鍼療法の有効性

その中でも、トリガーポイント鍼療法は、解剖学的知識と職人的な触察により、深部の筋膜や、筋と骨との接合部分・筋腱移行部、腱や骨膜に存在する受容器を直接叩くことができます。痛みの本態への作用なので、効果も高く、また治効も安定していると思います。
そういう意味で、理屈はよく分からないが何となく効いたというものではなく、生理学的事実に裏付けられた、合理的かつ再現性のある療法だと思います。

この治療法に出会ってからは、他の治療法は用いずに、トリガーポイント鍼療法一筋に研鑽に励んでいます。