医師と同様に、鍼灸師・マッサージ師も資格がなければ、施術することができません。その意味で、鍼灸マッサージ師は免許を取ってからが、本当の修業といえます。
とくにトリガーポイント鍼療法は、従来の経穴治療理論と異なり、発展しつつある技術です。常に最新の臨床知見を学ぶ必要があります。
当院院長・野崎真治も定期的に、大阪の関西医療大学・黒岩共一教授が主催するトリガーポイント研究会に参加、技術の研鑽に励み、またスタッフとしても普及に努めています。
このたび、トリガーポイント研究会で行われている研修会の内容を、関東で学ぶ勉強会を開催することになりました。
トリガーポイント鍼療法の技術向上を目指す、関東地域の鍼免許所有者の方々を対象にしています。KTP療法(トリガーポイント検索法、責任トリガーポイント理論)を広め、少しでも多くの患者さんにトリガーポイント鍼療法を受ける機会を増やすことを目的としています。
NHKの番組で取り上げられて以来、トリガーポイント注射が注目されるようになりました。トリガーポイント注射は整形外科、ペインクリニック、麻酔科で行われる治療で、首肩や腰の慢性的な痛みに効果があるとされます。
臨床では、患者さんが痛みを訴える場所と触診で分かる圧痛点から、トリガーポイント(索状硬結)を探します。消毒の後、筋膜直下に局所麻酔薬を注入します。
神経ブロック注射と共通した鎮痛効果をもたらすため、トリガーポイント・ブロック、痛点ブロックとも呼ばれます。
しかし、トリガーポイント注射で局所麻酔薬の代わりに生理食塩水を注入したり、単に針を刺入するだけでも鎮痛効果が現れることが、以前から知られていました。
近年の研究で、持続的な鎮痛効果を得るために必要な病変部の治癒反応は、局所麻酔薬による刺激遮断(ブロック)とは別な作用機序であることが分かってきました。一時的な鎮痛にとどまらない、いわゆる痛みの悪循環の改善です。
トリガーポイントに注射針の穿刺による刺激を加えることで、軸索反射が起こり血流が増加し、筋拘縮が改善される。さらに針刺入の刺激が中枢神経に伝わることで、内因性の鎮痛効果が発現すると考えられています。
関西医療大学・黒岩共一教授が提唱するトリガーポイント鍼療法は、古来から行われている鍼治療に、科学的・論理的な光を当てるものです。
トリガーポイント注射においても、トリガーポイントに正確に針先があたると、患者さんは特有の重い痛みを感じたり、筋肉の反応が起こります。これは、鍼治療の臨床現場で経験する生体反応と同一のものです。
トリガーポイント注射では、針の刺入は体表から1cmほどの深さです。身体深部の筋・筋膜に薬液の効果は浸透しても、針先の刺激による鎮痛効果は望めないことになります。
鍼治療は深層部の筋・筋膜にまで到達させる技術を持っていますので、トリガーポイントを直接刺激することができます。
黒岩教授の「トリガーポイント検索法」は、解剖学・運動学の見地から骨格筋にあるトリガーポイントを同定します。それに加えて、鍼灸技術の先行体験から得られた経験知を用いて判断します。
「責任トリガーポイント」と名付けたこの仮説では、患者さんが痛みを感じている場所が病変部(治療部位)である確率はかなり低くなります。
トリガーポイント鍼療法では、解剖学の知識と鍼治療の技術を用いて、慢性の運動器の疼痛治療を行います。
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの患者さんが訴える、痛む場所はだいたい決まっているといいます。しかし痛みを感じている場所が病変部ではないことが多いのです。臨床経験から、痛みの原因となっている筋肉は患者さんによって異なります。
痛みを発している《責任トリガーポイント》を探すためには、問診→運動検査→触診といった過程を踏みます。
問診では患者さんのどこが痛いのかをお聞きします。続いてどのような動作をすると痛むか検査したり、関節の可動域を測定し、悪くなっている筋肉を推測します。最後に決め手となるのが、触診による責任トリガーポイント(発痛部)の特定及び、刺鍼による治療的判定です。
トリガーポイント鍼療法を正しく行うためには、解剖学に基づいた人体骨格筋に対する正確な触察法と、旧来の経穴治療理論に囚われないトリガーポイント検索法の研鑽が欠かせません。
KTPトリガーポイント鍼療法は、長年の実践及び解剖学に基づく探求、最新の生理学的な見地を拠り所とし、今も日々進化を続けています。
技術研鑽にあたっては、解剖学の教科書では得ることができない、人体骨格筋の立体構造イメージ構築、深層筋触知技術の探求が望まれます。